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サプリメント栄養プロテイン

ランナーとプロテイン ─ 1日いくら、1回いくら、そして食事で足りるのか

ランナーのプロテインの話には、入口で誤解があります。**「飲むと筋肉がついて重くなる」という警戒と、「飲めば回復する」**という期待。どちらも、専門機関の文書が書いていることとは少しずれています。

スポーツ栄養の合同声明(米国スポーツ医学会 ACSM/米国栄養士会/カナダ栄養士会、2016)が挙げているタンパク質の役割は、代謝適応・修復・リモデリング・タンパク質の入れ替わりを支えることです。同声明は筋量の増加も扱っていますが、筋肥大が目的でなくても、壊れたものを直してトレーニングに体を適応させるために要る、という位置づけです。

この記事は栄養や医学の助言ではありません。持病のある方(特に腎機能に指摘のある方)、妊娠中・授乳中の方は医師や管理栄養士にご相談ください。全体像はランナーのサプリメントにまとめています。

1日いくら ─ 1.2〜2.0 g/kg

合同声明の中心的な記述です。

Current data suggest that dietary protein intake necessary to support metabolic adaptation, repair, remodeling, and for protein turnover generally ranges from 1.2 to 2.0 g/kg/d. (代謝適応・修復・リモデリング・タンパク質の入れ替わりを支えるために必要な食事性タンパク質の摂取量は、一般に1日あたり体重1kgにつき1.2〜2.0gの範囲にある)

体重に当てはめると、こうなります。

体重1.2 g/kg2.0 g/kg
50kg60g100g
55kg66g110g
60kg72g120g
65kg78g130g
70kg84g140g

幅が広いのは、トレーニングの状況によって必要量が動くからです。合同声明は「強化期の短期間、あるいはエネルギー摂取を減らしているときは、より高い摂取が適応となり得る」と付け加えています。

1回いくら ─ 0.25〜0.3 g/kg を、3〜5時間おき

近年の考え方は、1日の合計だけでなく配り方を重視します。合同声明の記述です。

newer recommendations now highlight that the muscle adaptation to training can be maximized by ingesting these targets as 0.3 g/kg body weight after key exercise sessions and every 3–5 hours over multiple meals. (新しい推奨は、トレーニングへの筋の適応が、重要な運動セッションの後と、3〜5時間おきの複数の食事にわたって体重1kgあたり0.3gとして摂ることで最大化され得る、という点を強調している)

運動後については、より具体的な数字があります。早期回復期(運動後0〜2時間)に良質なタンパク質から必須アミノ酸を約10g摂ることが目安で、これは体重1kgあたり0.25〜0.3g、または15〜25gに相当する、とされています。

体重1回あたり(0.25〜0.3 g/kg)
50kg約13〜15g
60kg15〜18g
70kg約18〜21g

40gを超えた分は、まだ効果が示されていない

ここも上限側の話が実務的です。

Higher doses (ie, >40 g dietary protein) have not yet been shown to further augment MPS and may only be prudent for the largest athletes, or during weight loss. (より多い用量、すなわち40gを超える食事性タンパク質は、筋タンパク合成をさらに高めることがまだ示されておらず最も体格の大きいアスリート、あるいは減量中においてのみ妥当かもしれない)

「まだ示されていない」であって「増えないと証明された」ではない点、そして体格が大きい場合や減量中は例外があり得る点に注意してください(2016年時点の記述です)。それでも、一般的な体格のランナーが1回に大量を入れる方向に、この文書は根拠を与えていません。大きめのプロテイン1回分は20〜30g程度が多く、この範囲に収まります。1回に大量を入れるより、3〜5時間おきに配るほうが理にかなっています。

食事で足りるのか ─ 「通常は満たせる」と書かれています

これが、この記事でいちばん伝えたい一文かもしれません。合同声明の要約部分です。

Such intakes can generally be met from food sources. (そうした摂取量は、一般に食品から満たすことができる

1回15〜25gというのは、特別な食事ではありません。主菜が入った普通の食事1回で届く範囲です。自分が実際にどれだけ摂れているかを知りたい人は、文部科学省の食品成分データベースで食品ごとの値を調べられます(現在は「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」に対応)。まず数日、自分の食事を数えてみるのが、サプリを買うより先にやることです。

そのうえで、サプリの位置づけはこう書かれています。

When whole food protein sources are not convenient or available, then portable, third-party tested dietary supplements with high-quality ingredients may serve as a practical alternative to help athletes meet their protein needs... Recommendations regarding protein supplements should be conservative. (通常の食品からタンパク質を摂ることが不便、または食品を入手できない場合には、持ち運べる、第三者機関の検査を受けた高品質な原材料のサプリメントが、必要量を満たす実用的な代替となり得る…タンパク質サプリメントに関する推奨は保守的であるべき

「都合よく手に入らない場合の代替」であって、主役ではありません。実際、AISの分類でもプロテイン(分離タンパク質)は Group A ですが、パフォーマンス系ではなくスポーツ食品の枠に入っています。位置づけは「食事で足りない分を運ぶ手段」です。

出張・遠征・練習直後で食事まで時間が空くときなど、その代替が実際に役立つ場面はあります。そこを否定する話ではありません。

⚠️ なおIOC合意声明は、プロテイン製品について「他の成分を含むことがあり、その一部は証拠に基づかず、汚染のリスクを高める可能性がある」と注記しています。競技会に出る人は、成分表示とアンチ・ドーピングの確認先も見ておいてください。

減量中こそ、増やす

ランナーが体重を落とす時期の話です。ここは直感と逆かもしれません。

合同声明は、エネルギー制限下や怪我による急な活動低下では、1日2.0 g/kg以上の高めの摂取を1日に分散させることが、除脂肪量の減少を防ぐうえで有利になり得る、としています。実際の研究として挙がっているのは次のものです。

the provision of a higher protein intake (2.3 vs 1 g/kg/d) in a shorter-term (2 w), energy-restricted diet in athletes was found to retain muscle mass while losing weight and body fat (エネルギー制限下のアスリートで、2.3 g/kg/日と1 g/kg/日を比較した短期(2週間)の研究では、高いほうが体重と体脂肪を減らしながら筋量を保った

減量幅についても目安があります。

fat-free mass and performance may be better preserved in athletes who minimize weekly weight loss to <1% per week (除脂肪量とパフォーマンスは、週あたりの減量を体重の1%未満に抑えたアスリートでよりよく保たれる可能性がある)

体重60kgなら週600g未満です。レース前に急いで絞ると、落ちるものの中に走るための組織が混ざります。

タンパク質だけ増やしても足りない ─ エネルギーと糖質

順番の話として重要な一文があります。合同声明は、十分なエネルギー、とくに糖質をエネルギー消費に見合うだけ摂ることが重要な理由を、**「アミノ酸がタンパク質合成に回され、酸化(燃焼)されないようにするため」**だと説明しています。

つまり、エネルギーが足りていないとアミノ酸は燃料にも回ります。タンパク質の量だけでなく、総エネルギーと糖質を確保することが同時に効くということです(なお前述のとおり、意図的な減量期にはタンパク質を高めにするほうが筋量保持に有利、という別の話があります)。

これはランナーのサプリメントで書いた「食事とエネルギーが最初」と同じ話です。

まとめると

  • 1日 1.2〜2.0 g/kg。強化期や減量期は高いほう
  • 1回 0.25〜0.3 g/kg(15〜25g) を、ポイント練習の後と3〜5時間おき
  • 40gを超えた分の上乗せ効果は、まだ示されていない(体格が大きい場合や減量中は例外があり得る)
  • 通常は食事から満たせる。サプリは食事が難しいときの代替
  • 減量中はむしろ増やす。減量ペースは週1%未満
  • エネルギー(とくに糖質)が足りていないと、アミノ酸は燃料にも回る

「飲むと重くなる」という警戒は、走る量に対して修復の材料が足りない状態を放置するほうのリスクを見落としています。逆に「飲めば回復する」という期待は、総量と配り方、そしてエネルギーと糖質も同時に要るという点を飛ばしています。

更新履歴

  • 2026年9月7日 ─ 初出

免責・情報の鮮度について

本記事は栄養・医学の助言ではありません。持病のある方(特に腎機能に指摘のある方)、妊娠中・授乳中の方、薬を服用中の方は、摂取量の変更の前に医師や管理栄養士にご相談ください。本記事の数値は、健康なアスリートを対象とした専門機関の文書を紹介したものです。

内容は2026年9月7日時点で、Position of the Academy of Nutrition and Dietetics, Dietitians of Canada, and the American College of Sports Medicine: Nutrition and Athletic Performance(2016)、IOC consensus statement: dietary supplements and the high-performance athlete(Maughan ら、British Journal of Sports Medicine 2018)、AIS Sports Supplement Framework食品成分データベース(文部科学省)を確認して記載しています。合同声明は2016年、IOC合意声明は2018年の文書で、その後の研究や指針の更新までは追えていません。


サプリメント全体の地図はランナーのサプリメントへ。同じシリーズのカフェインもどうぞ。レース中の補給はエネルギー補給計画にまとめています。

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