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最終更新: 補給エナジージェルレース戦略

フルマラソン後半の失速を防ぐ ─ 完走タイム別エネルギー補給計画とジェルの選び方【高糖質時代の最新版】

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「30kmの壁」の原因はひとつではありません。ペース設定のミス、脚筋力の消耗、暑さ。ただしその中で、事前の補給計画によってリスクを下げやすいのがエネルギー切れです(スタート前の食事、貯蔵グリコーゲン、ペース配分、消化吸収、気温や体調も関わるため、補給計画だけで完全に防げるわけではありません)。この記事では、完走タイム別の補給計画の立て方と、いま補給の世界で起きている変化をまとめます。

なぜ後半にエネルギーが切れるのか

体内に貯蔵できるグリコーゲンは肝臓と筋肉を合わせて概ね 1,600〜2,000kcal 程度とされています。一方、フルマラソンの消費エネルギーは「体重 × 距離 × 1.0kcal」の近似で、体重60kgなら約2,500kcal。つまり計算上、貯蔵だけでは足りない構造になっています。

フルマラソンのエネルギー収支図。貯蔵約1,600〜2,000kcalに対し総消費約2,532kcalで、不足分を補給で埋める

足りない分を脂質代謝とレース中の補給で埋めるのが、フルマラソンの補給計画の基本形です。

補給の「いま」─ 2026年の3つのトレンド

  1. 高糖質化 ─ 従来の定番ガイドラインは「糖質 30〜60g/時」でしたが、近年はエリートを中心に 90g/時以上を摂る高糖質戦略が一般化しました。グルコースとフルクトースを組み合わせると吸収の上限が上がることが背景にあります。市民ランナーがいきなり真似ると胃腸トラブルの元ですが、「60g/時を目指して練習で慣らす」方向は明確にトレンドです。
  2. ハイドロゲル技術 ─ Maurten に代表される、糖質をゲル状のマトリクスに包んで胃の負担を抑えるアプローチ。高濃度の糖質を摂っても胃にもたれにくいとされ、高糖質戦略とセットで広がりました。
  3. 1本あたりの大容量化 ─ 象徴が Maurten GEL 160(糖質40g/本)。従来の25g級と比べて同じ糖質量を6割の本数で携行できるため、ポケットやジェルホルダーの物理的制約が緩みます。

トレンドの共通項は「たくさん摂る・ただし胃と相談しながら」。そのために腸トレーニング(gut training)─ 練習でレースと同じ補給を繰り返して消化能力自体を慣らす ─ という考え方が当たり前になってきました。

どれだけ摂ればいいか ─ 基準線

一般的な推奨は 2 時間を超える持久運動で糖質 30〜60g/時、トレーニングで慣らしたランナーなら 90g/時程度まで。エナジージェルは 1 本あたり糖質 20〜40g(約80〜160kcal)が主流です。以下の表はジェル1本 = 糖質25g として、30分おきに摂った場合の計画です。

完走タイム別・補給計画の目安(30分おき)

完走タイム補給機会(1本25g換算)合計糖質摂取タイミング糖質ペース
3時間00分5回125g30分ごと(0:30〜2:30)約42g/時
3時間30分6回150g30分ごと(0:30〜3:00)約43g/時
4時間00分7回175g30分ごと(0:30〜3:30)約44g/時
4時間30分8回200g30分ごと(0:30〜4:00)約44g/時

回数と本数は別ものです。上の「回数」は1本25gのジェルを前提にした補給機会で、実際に持つ本数は選ぶ商品の糖質量で変わります(1本40gなら合計150gは4本)。

30分おき補給のタイムライン図。目標3時間30分の例で、スタート30分後から30分ごとに6回、終盤はカフェイン入りを使う場合の位置も示す

30分おきの計画はいずれも推奨レンジ(30〜60g/時)に収まります。ここから糖質ペースを上げたい場合の選択肢は2つ ─ 20分おきにするか、1本40g級の高糖質ジェルに置き換えるか。後者なら本数を増やさずに 60〜70g/時へ届きます(その分、1本あたりの胃への負荷は上がるので必ず練習で試すこと)。自分の目標タイムでの補給機会・合計糖質量・商品ごとの必要本数はペース計算ツールで自動計算できます(体重からの消費カロリー試算つき)。

摂り方のコツ

  • 最初の1本を早めに。空腹を感じてからでは遅く、血糖が下がる前の定期補給が原則です。スタート30分後を目安に。
  • 給水所の少し手前で開封する。ジェルの後に水を飲むと胃への負担が減り、口もさっぱりします。コース図でエイドの位置を確認して、摂取タイミングをエイドに合わせて微調整しましょう。
  • カフェイン入りは後半に。疲労感が出てくる25km以降に回すランナーが多いです。ただしカフェインの感受性は個人差が大きいので、必ず練習で試してください。自分の目標タイムだと25kmを何時何分に通過し、そこから何回摂ることになるのかは、ペース計算ツールが摂取タイミングを25km前後で分けて表示します。
  • 練習で「同じ計画」を試す(腸トレーニング)。レース当日に初めてのジェル・初めての頻度を試すのは失敗のもとです。30km走やペース走で本番と同じ銘柄・同じタイミングを最低2回、高糖質戦略を狙うなら段階的に量を上げながら試しておきましょう。

ジェルをどう持って走るか

計画を立てると次にぶつかるのが「6本もどこに入れるのか」問題です。ランパンのポケットに入るのはせいぜい2〜3本。残りは腰まわりで運ぶのが現実解で、揺れにくい伸縮タイプのランニングポーチが定番です。ポーチも本番でいきなり使わず、ロング走で位置と揺れを確かめておきましょう。

ポーチのほかに、ジェル用のポケットやループが付いたランニングショーツ、背中と胸まわりに入れる薄手のベスト型ザックという持ち方もあります。下のカードの容量・ポケットの数・重さは、メーカーの公式の記載です。

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SPIBELT

スパイベルト

揺れにくい伸縮ポーチの定番。ジェル携行問題の実用解

  • 特許取得済み・意匠登録済み(日本の公式サイト)
  • 伸縮するポケットは通常の5倍まで広がり、揺れにくいフィット(米国の公式サイトの説明)
  • 米国の公式サイトは、エナジージェルやエナジーバーを入れる使い方を紹介

NATHAN(ネイサン)

ジップスター マックス

大型スマホやソフトフラスクにも対応する、ポケット4つのウエストベルト(公式)

  • ジップ付きポケット2つ+フラップ付きポケット2つの計4つ(公式)
  • 重さ75g(Mサイズ)。ウエスト58〜94cmの5サイズ(公式)
  • 品番 NS30630

NATHAN(ネイサン)

ニュートリション レースナンバーベルト

ゼッケンを留められて、ジェルループが付いたベルト(公式)

  • ゼッケンホルダーとジェルループ付き(公式)
  • 重さ40g。ウエスト66〜112cmのフリーサイズ(公式)
  • 公式は「トライアスロンやマラソンレース時に活躍」と説明。品番 NS10080

アシックス

METARUN 5インチショーツ(メンズ)

ポケットとウエストバンドのループに、ジェルを入れられるランニングショーツ

  • 公式の説明は「複数のポケットとウエストバンドのループにより、ジェルやスマートフォンなど長時間のランニングに必要なものを収納できます」
  • 品番 2011D436

ザ・ノース・フェイス

エンデュリストレイルショーツ

ウエストにポケットが6つ。メンズとレディースがある

  • ストレッチ素材のポケット6つ。公式は「ジェルやエナジーバーなどの行動食や、スマートフォンなどの小物の揺れを抑えながら携行できます」と説明
  • 重さ約80g(メンズLサイズ・公式)
  • 品番 メンズ NB72571/レディース NBW72571

サロモン

ACTIVE SKIN 4(ソフトフラスク付き)

容量4L・重さ195gの薄手のランニングベスト

  • 容量4L。重さ195g(付属品込み255g)(公式)
  • ソフトフラスク付き。胸ポケットが2つ(公式)
  • 公式の紹介はトレイルランニング向け。品番 LC21782

ジェルの選び方

選ぶ基準は次の4つです。

  1. 1本あたりの糖質量 ─ 25g級が定番、40g級なら携行本数を減らせます
  2. カフェインの有無 ─ 後半の一部をカフェイン入りに切り替えるランナーもいます。ただし1本あたりの含有量は製品差が大きく、この記事で挙げている製品でも 25mg〜120mg の開きがあります。本数ではなく mg で確認し、当日の合計量を把握してください(感受性には個人差があり、摂取を控えている方は無理に使う必要はありません)
  3. 粘度と味 ─ 濃厚なタイプは水が欲しくなります。終盤でも喉を通るかは重要です
  4. 入手性 ─ 練習で繰り返し試すには、継続的に買いやすいことも実は大事です

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Maurten GEL 160の商品画像
画像: 楽天市場の
取扱商品の一例

Maurten

GEL 160

1本で糖質40g。高糖質トレンドを象徴するハイドロゲルの大容量版

  • 1本あたり糖質 40g / 約160kcal(公称)=携行本数を減らせる
  • ハイドロゲル化により胃での不快感を抑える設計
  • 香料・着色料・保存料を使わないシンプルな組成

カフェインは含みません(公式)。1袋65g・炭水化物40g。

Maurten GEL 100の商品画像
画像: 楽天市場の
取扱商品の一例

Maurten

GEL 100

ハイドロゲル技術の定番。エリートランナーの使用実績多数

  • 1本あたり糖質 25g(公称)
  • ハイドロゲル化により胃での不快感を抑える設計
  • 香料・着色料を使わないシンプルな組成

GEL 100 自体はカフェインを含みません。販売ページにはカフェイン100mgの「GEL 100 CAF 100」も並ぶため、購入時に別製品であることを確認してください。

Mag-on エナジージェルの商品画像
画像: 楽天市場の
取扱商品の一例

Mag-on

エナジージェル

水溶性マグネシウム配合の国産ジェル。フレーバーが豊富

  • エネルギー補給と同時にマグネシウムを摂れる
  • 国内レースのエイドや売店でも入手しやすい
  • カフェイン入りフレーバーあり

カフェイン: カフェイン入りはレモン・青みかん・ピンクグレープフルーツの1本25mg。梅・ピーチ・バナナ・りんご・グレープフルーツは不使用(公式)。

炭水化物30g・120kcal・マグネシウム50mgは全フレーバー共通(公式)。カフェインの有無はフレーバーによって異なります。

アミノサウルス エナジージェルの商品画像
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取扱商品の一例

アミノサウルス

エナジージェル

アミノ酸を同時配合した国産ジェル。後半勝負向けカフェインタイプも

  • BCAA / アルギニン等のアミノ酸を配合
  • カフェイン有無の2タイプから選べる

カフェイン: 01マンゴー=75mg / 02レモン=不使用 / Elite03ピーチレモン=120mg / Elite04グレープ=不使用(公式)。

販売ページには 01 / 02 / Elite 03 / Elite 04 が並びます。どれを選ぶかで炭水化物もカフェインも変わります。

アミノバイタル(味の素) アミノショット パーフェクトエネルギー 45gの商品画像
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取扱商品の一例

アミノバイタル(味の素)

アミノショット パーフェクトエネルギー 45g

味の素のアミノバイタルの、持ち運びしやすい45gの小袋

  • 1袋45gあたり炭水化物24.4g・109kcal(公式)
  • アミノ酸2.5g(アラニン2.25g・プロリン0.25g)を配合(公式)
  • 同じシリーズに130gのゼリードリンク(炭水化物41g)があるので、45gと書かれた商品かを確かめる

原材料名にカフェインの表示はありません(公式)。130gのゼリードリンク(180kcal・炭水化物41g)とは別製品です。

WINZONE(日本新薬) エナジージェルの商品画像
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取扱商品の一例

WINZONE(日本新薬)

エナジージェル

日本新薬のジェル。1袋40gにマグネシウムとヒドロキシクエン酸を配合

  • 1袋40gあたり炭水化物29g・115kcal(パイナップル風味は28.8g・公式)
  • マグネシウム50mg・ヒドロキシクエン酸100mgを配合(公式)
  • アンチ・ドーピングの認証「インフォームド・チョイス」を取得(公式)

カフェイン: カフェイン入りはオレンジ風味だけで1袋50mg(公式)。シークワーサー・マスカット・パイナップルの原材料名にカフェインの表示はありません。

パラチノース(DM三井製糖) WARABEAT!!(ワラビート)の商品画像
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パラチノース(DM三井製糖)

WARABEAT!!(ワラビート)

わらび餅風のエネルギーゼリー。原材料の最初がパラチノースの1本60g

  • 1本60gあたり炭水化物26g(黒糖わらび風・ゆずわらび風とも。公式の表示は推定値)
  • 黒糖わらび風104kcal・ゆずわらび風101kcal(公式・推定値)
  • 原材料名の最初がパラチノース(公式)

原材料名にカフェインの表示はありません(公式)。エネルギーは黒糖わらび風104kcal・ゆずわらび風101kcal(推定値)。

レース前の調整(量を削り、強度と頻度は残す)と、カーボローディングの現在形はテーパリングの記事にまとめました。当日の持ち物と朝の動線はレース当日の持ち物チェックリストへ。カフェインの量の目安(体重あたりの計算と、その日の合計の数え方)はランナーのカフェインに、サプリメント全般の位置づけはランナーのサプリメントにまとめています。

免責

本記事の内容は一般的なスポーツ栄養のガイドラインと近年の実践傾向に基づく目安であり、医学的助言ではありません。消化吸収の能力には大きな個人差があります。胃腸の持病がある方、レース中に体調の異変を感じた場合は、無理をせず医療スタッフに相談してください。

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