フルマラソン後半の失速を防ぐ ─ 完走タイム別エネルギー補給計画とジェルの選び方【高糖質時代の最新版】
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「30kmの壁」の原因はひとつではありません。ペース設定のミス、脚筋力の消耗、暑さ。ただしその中で唯一、事前の計画だけでほぼ潰せるのがエネルギー切れです。この記事では、完走タイム別の補給計画の立て方と、いま補給の世界で起きている変化をまとめます。
なぜ後半にエネルギーが切れるのか
体内に貯蔵できるグリコーゲンは肝臓と筋肉を合わせて概ね 1,600〜2,000kcal 程度とされています。一方、フルマラソンの消費エネルギーは「体重 × 距離 × 1.0kcal」の近似で、体重60kgなら約2,500kcal。つまり計算上、貯蔵だけでは足りない構造になっています。
足りない分を脂質代謝とレース中の補給で埋めるのが、フルマラソンの補給計画の基本形です。
補給の「いま」─ 2026年の3つのトレンド
- 高糖質化 ─ 従来の定番ガイドラインは「糖質 30〜60g/時」でしたが、近年はエリートを中心に 90g/時以上を摂る高糖質戦略が一般化しました。グルコースとフルクトースを組み合わせると吸収の上限が上がることが背景にあります。市民ランナーがいきなり真似ると胃腸トラブルの元ですが、「60g/時を目指して練習で慣らす」方向は明確にトレンドです。
- ハイドロゲル技術 ─ Maurten に代表される、糖質をゲル状のマトリクスに包んで胃の負担を抑えるアプローチ。高濃度の糖質を摂っても胃にもたれにくいとされ、高糖質戦略とセットで広がりました。
- 1本あたりの大容量化 ─ 象徴が Maurten GEL 160(糖質40g/本)。従来の25g級と比べて同じ糖質量を6割の本数で携行できるため、ポケットやジェルホルダーの物理的制約が緩みます。
トレンドの共通項は「たくさん摂る・ただし胃と相談しながら」。そのために腸トレーニング(gut training)─ 練習でレースと同じ補給を繰り返して消化能力自体を慣らす ─ という考え方が当たり前になってきました。
どれだけ摂ればいいか ─ 基準線
一般的な推奨は 2 時間を超える持久運動で糖質 30〜60g/時、トレーニングで慣らしたランナーなら 90g/時程度まで。エナジージェルは 1 本あたり糖質 20〜40g(約80〜160kcal)が主流です。以下の表はジェル1本 = 糖質25g として、30分おきに摂った場合の計画です。
完走タイム別・補給計画の目安(30分おき)
| 完走タイム | ジェル本数 | 摂取タイミング | 糖質ペース |
|---|---|---|---|
| 3時間00分 | 5本 | 30分ごと(0:30〜2:30) | 約42g/時 |
| 3時間30分 | 6本 | 30分ごと(0:30〜3:00) | 約43g/時 |
| 4時間00分 | 7本 | 30分ごと(0:30〜3:30) | 約44g/時 |
| 4時間30分 | 8本 | 30分ごと(0:30〜4:00) | 約44g/時 |
30分おきの計画はいずれも推奨レンジ(30〜60g/時)に収まります。ここから糖質ペースを上げたい場合の選択肢は2つ ─ 20分おきにするか、1本40g級の高糖質ジェルに置き換えるか。後者なら本数を増やさずに 60〜70g/時へ届きます(その分、1本あたりの胃への負荷は上がるので必ず練習で試すこと)。自分の目標タイムでの本数とタイミングはペース計算ツールで自動計算できます(体重からの消費カロリー試算つき)。
摂り方のコツ
- 最初の1本を早めに。空腹を感じてからでは遅く、血糖が下がる前の定期補給が原則です。スタート30分後を目安に。
- 給水所の少し手前で開封する。ジェルの後に水を飲むと胃への負担が減り、口もさっぱりします。コース図でエイドの位置を確認して、摂取タイミングをエイドに合わせて微調整しましょう。
- カフェイン入りは後半に。疲労感が出てくる25km以降に回すランナーが多いです。ただしカフェインの感受性は個人差が大きいので、必ず練習で試してください。
- 練習で「同じ計画」を試す(腸トレーニング)。レース当日に初めてのジェル・初めての頻度を試すのは失敗のもとです。30km走やペース走で本番と同じ銘柄・同じタイミングを最低2回、高糖質戦略を狙うなら段階的に量を上げながら試しておきましょう。
ジェルをどう持って走るか
計画を立てると次に必ずぶつかるのが「6本もどこに入れるのか」問題です。ランパンのポケットに入るのはせいぜい2〜3本。残りは腰まわりで運ぶのが現実解で、揺れにくい伸縮タイプのランニングポーチが定番です。ポーチも本番でいきなり使わず、ロング走で位置と揺れを確かめておきましょう。
ジェルの選び方
選ぶ基準は次の4つです。
- 1本あたりの糖質量 ─ 25g級が定番、40g級なら携行本数を減らせます
- カフェインの有無 ─ 後半用に1〜2本だけカフェイン入りを混ぜる構成が定番です
- 粘度と味 ─ 濃厚なタイプは水が欲しくなります。終盤でも喉を通るかは重要です
- 入手性 ─ 練習で繰り返し試すには、継続的に買いやすいことも実は大事です
Maurten
GEL 160
1本で糖質40g。高糖質トレンドを象徴するハイドロゲルの大容量版
- 1本あたり糖質 40g / 約160kcal(公称)=携行本数を減らせる
- ハイドロゲル化により胃での不快感を抑える設計
- 香料・着色料・保存料を使わないシンプルな組成
Maurten
GEL 100
ハイドロゲル技術の定番。エリートランナーの使用実績多数
- 1本あたり糖質 25g(公称)
- ハイドロゲル化により胃での不快感を抑える設計
- 香料・着色料を使わないシンプルな組成
Mag-on
エナジージェル
水溶性マグネシウム配合の国産ジェル。フレーバーが豊富
- エネルギー補給と同時にマグネシウムを摂れる
- 国内レースのエイドや売店でも入手しやすい
- カフェイン入りフレーバーあり
免責
本記事の内容は一般的なスポーツ栄養のガイドラインと近年の実践傾向に基づく目安であり、医学的助言ではありません。消化吸収の能力には大きな個人差があります。胃腸の持病がある方、レース中に体調の異変を感じた場合は、無理をせず医療スタッフに相談してください。