「自分の足で走る」シューズを目的別に選ぶ ─ ジョグ・テンポ走・レース前の刺激入れ
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接地感や自分の足で蹴る感覚を売りにした靴に興味を持ったとき、最初につまずくのが「で、どれを買えばいいのか」です。厚底カーボンなら「レース用」の一言で済みますが、この手の靴は用途の幅が広く、一括りにできません。
毎日距離を踏むための靴と、レース数日前に短く刺激を入れる靴では、求めるものが違います。ここではジョグ・テンポ走・刺激入れという代表的な3場面に絞って、何を見て選ぶかを整理します(ロング走はジョグ寄り、インターバルはテンポ走寄りに読んでください)。
先に断っておきたいこと ─ メーカーはプレートの有無をあまり書かない
各社の製品ページを比較すると、「プレートが入っていない」という記載はほとんど見当たりません。
たとえばアシックスのエボライド スピード 3 には「カーボンプレートを搭載しておらず、軽量かつ自分の足で進める感覚のあるシューズです」とはっきり書かれています。しかしこれは例外的で、他のモデルはプレートについて何も触れていないのが普通です。
そして、「記載がない」ことは「入っていない」ことの証明にはなりません。この記事では、記載のないモデルを勝手に「ノンプレート」と断定せず、公式がどう書いているかをそのまま並べます。判断の材料は読者に渡すという方針です。
この記事で扱うのは「接地感・自分の足で蹴る感覚・軽さを、メーカー自身が訴求しているモデル」です。カーボンプレートを前面に出しているモデル(メタスピード、ハイペリオン エリートなど)は別記事で扱っています。
各社が公表している範囲
| モデル | プレートの公式記載 | 靴底の厚さ | 公式の想定用途 |
|---|---|---|---|
| エボライド スピード 3(アシックス) | 「カーボンプレートを搭載しておらず」と明記 | 約34.5mm | レース/日々のトレーニング |
| ターサー RP 3(アシックス) | 記載なし | 約31.5mm | レース/スピードトレーニング/テンポラン |
| ハイペリオン 3(ブルックス) | 記載なし | 記載なし | トレーニング〜レース/テンポ走・インターバル・ファルトレク |
| アディゼロ ジャパン 9(アディダス) | 記載なし | 記載なし | 「薄底&高反発で感覚を研ぎ澄ます」 |
※各社日本公式の製品ページ(2026年8月13日確認)
厚みの数値を公表しているかどうかは、メーカーによって違います。アシックスは「靴底の最大の厚さ」を製品情報に載せていますが、ブルックスとアディダスは記載がありません。同じ条件で全モデルを数値比較することは、現状ではできません。
数値が取れるアシックスの2足について、社内での位置関係だけ図にしておきます。ブランドをまたいだ比較ではない点に注意してください。
厚底レーシングが40mm前後になった今、30mm台は相対的に薄い部類に入ります。ただし走ったときの「薄い」という感覚は、厚みだけでなくミッドソールの硬さや前足部の曲がりやすさでも変わります。
用途で変わるのは「何を優先するか」
- ジョグ ─ 距離を踏むのが目的。耐久性と、脚が保つことが優先
- テンポ走 ─ 一定ペースを保つのが目的。接地の感触と、ペースを維持できる程度の反発
- 刺激入れ ─ 短時間で動きを出すのが目的。軽さと、扱い慣れていること
ジョグ・日々の練習
一番距離を踏む場面なので、いきなり最も薄い靴を選ばないほうが無難です。脚づくりのつもりで毎日薄い靴に替えて、慣れる前に張りや違和感を覚える人もいます。
この用途ではエボライド スピード 3が扱いやすい位置にいます。公式が「カーボンプレートを搭載しておらず、軽量かつ自分の足で進める感覚のある」と明記したうえで、想定用途に「日々のトレーニング用シューズとしても」を挙げているモデルです。靴底の最大の厚さは約34.5mmで、数値を公表しているアシックス2足の中では厚いほうです。
そもそも「プレートに頼らず距離を踏む」ことが目的なら、もっと厚い靴でも構いません。薄さは目的ではなく手段です。
テンポ走・スピード練習
一定ペースを刻む練習では、接地の感触が分かることを重視する人が多い場面です。どのくらい感じ取れるかは、厚みだけでなくミッドソールの硬さや自分の走り方でも変わります。
ターサー RP 3 は、アシックスが「自分の足で蹴る感覚を研ぎ澄ませたレーシングシューズ」と説明し、想定用途に「スピードトレーニングやテンポラン」を挙げているモデルです。靴底の最大の厚さは約31.5mm。同社は「DIRECT & RESPONSIVE(ダイレクトな接地感が、自分の足で蹴り出す感覚とスピードを生み出す)」というカテゴリに分類していて、メーカー自身がこの方向の製品として設計していることが分かります。
テンポ走・スピード練習という用途では、ハイペリオン 3(ブルックス)も候補になります。公式のおすすめが「テンポ走やインターバル、ファルトレクを楽しみたい方」「トレーニングからレースまで1足でこなしたい方」で、ミッドソールは窒素注入フォームの DNA FLASH v2。ただし前述のとおり、厚みも重量もプレートの有無も公式ページには記載がありません。
レース前の刺激入れ
ここは目的が2つに分かれるので、混ぜないほうが選びやすくなります。
- レース当日の感覚を確認したい刺激入れ ─ 基準になるのはレース当日に使う靴です。厚底カーボンで走るなら、その靴で短く動くほうが、確認したかったものがそのまま確かめられます
- 脚を疲れさせずに動きだけ出したい刺激入れ ─ こちらは軽くて履き慣れた一足が向きます。ターサー RP 3 やアディゼロ ジャパン 9 のような、普段から使っている薄めの靴です
アディゼロ ジャパン 9 は、アディダス公式の製品説明が「薄底&高反発で感覚を研ぎ澄ますランニングシューズ」。公式が挙げる搭載機能は「軽量+フィット感」「高反発ドッグボーン」「高グリップアウトソール」で、カーボンプレートの記載はありません。筆者はこのシリーズの過去モデルを練習で使っています。
ここまでに挙げた候補
BROOKS
ハイペリオン 3
公式が「トレーニングからレースまで1足で」と位置づけるスピードモデル
- ミッドソールは窒素注入フォーム DNA FLASH v2。前作よりミッドソールを2mm増量(ブルックス日本公式)
- 公式のおすすめは「テンポ走やインターバル、ファルトレク」「トレーニングからレースまで1足でこなしたい方」
- 靴底の厚さ・重量・プレートの有無は公式の製品ページに記載がない(2026年8月13日確認)
ASICS
ターサー RP 3
アシックスが「自分の足で蹴る感覚」と位置づける、テンポ走向けの薄底
- 靴底の最大の厚さは約31.5mm(アシックス日本公式の製品情報で確認)
- 公式の想定用途は「自己ベスト更新を目指すランナーのレース」「スピードトレーニングやテンポラン」
- ミッドソールは FF BLAST。PROPULSION TRUSSTIC と ASICSGRIP を組み合わせる
ASICS
エボライド スピード 3
公式が「カーボンプレート非搭載」と明記する、日々の練習からレースまでの一足
- 靴底の最大の厚さは約34.5mm(アシックス日本公式の製品情報で確認)
- 公式の説明に「カーボンプレートを搭載しておらず、軽量かつ自分の足で進める感覚のあるシューズ」とある
- ミッドソールは FF BLAST PLUS。想定用途は「レースではもちろん、日々のトレーニング用としても」
adidas
アディゼロ ジャパン 9
公式が「薄底&高反発で感覚を研ぎ澄ます」と説明する、METASLEEK に近い方向の一足
- アディダス公式の製品説明は「薄底&高反発で感覚を研ぎ澄ますランニングシューズ」
- 公式が挙げる搭載機能は「軽量+フィット感」「高反発ドッグボーン」「高グリップアウトソール」
- 公式の製品ページにカーボンプレートの記載はない(2026年8月12日確認)
薄い靴へ移るときは段階的に
厚底のプレート機ばかり履いている人が急に薄い靴へ移ると、ふくらはぎやアキレス腱まわりに違和感を覚える人がいます。短い距離から入り、週の中で少しずつ置き換えて、違和感が出たら戻してください。詳しくはプレートあり・なしの使い分けに書いています。
「プレートが無いから脚が鍛えられる」とまでは言えません。効果には個人差があり、走行距離や強度、それまでの脚の状態にも左右されます。
1足から始めるなら
用途を分ける考え方は役に立ちますが、まずは使う時間がいちばん長い場面に合わせた一足で十分です。週の大半がジョグなら厚めを、テンポ走を軸に組んでいるなら薄めを選びます。
そのうえで、靴を選ぶ前に目標タイムに対してペース設定が合っているかを確認しておくと、練習の狙いがはっきりします。ペース計算ツールで5kmごとのスプリットを出せます。
情報の鮮度について
本記事の仕様と引用は2026年8月13日時点で、アシックス日本公式・ブルックス日本公式・アディダス日本公式の各製品ページを確認して記載しています。「記載なし」は、その項目が公式ページで確認できなかったという意味であり、その機能が無いことを示すものではありません。走行感は体重・走法・路面で変わります。ラインナップは更新されるため、購入時は販売ページで現行モデルを確認してください。